10月29日(日)に大阪心斎橋の文学バー「Bar liseur」にて行われた、小川洋子さんがゲストのトークイベントに参加してきました。バーの店主である作家の玄月さんとの軽快な会話が約2時間。今年1月に刊行された短編集「不時着する流星たち」を手に、物語が生まれた背景の出来事や、作品に登場する人物のキャラクターのお話など、裏話を聞くことができました。数多くの作品の朗読もしてくださいました。「言葉を持たない、言葉を発することが困難な弱者の心の中を小説で表現することが私の仕事です。」という言葉がとても印象的でした。また、「ギネスブックが大好きで愛読書です。」というレアなお話も。バーという空間の心地よさが、小川洋子さんとの距離感を身近に感じるような、魅惑的な時間でした。(N、H)

 

第8回芦屋文学サロン「富田砕花と谷崎潤一郎~谷川俊太郎氏を招いて~」


 10月1日(日)に芦屋市ルナホールで開催された上記のイベントに行ってきました。初めての「生」谷川俊太郎さんということで、とても楽しみにしていました。
 谷川俊太郎さんの講演は、自作詩の朗読を交えながら、軽快に進行。彼の声のトーンは高めで聞きやすく、速くなったり遅くなったり、感情をこめた詩の朗読には、引き付けられました。詩の説明では「詩の材質感」「詩のボディ」「詩の匂い」など、ことばのひとつひとつを豊かに表現していたのが印象的でした。
 “日本語は擬態語などが多く、ひらがなは詩と相性がいい。現代詩は意味を考えすぎ、日本語の音の豊かさを味わうのもいい。声に出すことを意識して詩を作る。たくさんの聴衆がいても、その中の一人に手渡すように詩を朗読する”などと語り、谷川俊太郎氏の詩の魅力はこういうところにもあるのだと思いました。
 特に詩「みみをすます」の朗読は素晴らしかったです。身近な音に耳を澄ましている情景から、聞いている世界が空間ばかりでなく時間までも広がって、詩の世界とともに自分の心も一緒にどんどん広がり、谷川俊太郎氏とともに過去を旅しているようでした。
 イベント後、「みみをすます」を活字で読んでみたのですが、耳から聞いた詩の世界のイメージとは違いました。音読の奥の深さを改めて感じました。
 ちょうど今は読書の秋、谷川俊太郎の詩の世界にどっぷりつかってみようかなと考えています。(YM

第4回「作家と語る」 桐野夏生さんをお迎えして                2017.6.17()

  (武庫川女子大学にて)レポート                                                                                                                   

 

武庫川女子大学のこの企画は、作家「が」語るのではなく、学生が作家「と」語る、ということ、そこに最大の魅力と面白さがあります。大学講堂の舞台上には、小説を読んだ学生たちがゲスト作家とともに並びます。作品中の「ぐっと来たひとこと」を選び、その言葉を選んだ理由や感想など、作家とのトークセッションが展開します。大股でゆっくりした足取りで舞台上に登場した桐野さんは、「凛とした」という形容詞がぴったりの方で、ハスキーなお声も相まって、本当にかっこいい女性という印象でした。

「グロテスク」では、とにかく女性の苦悩や生きづらさを、「優しいおとな」では、「愛」にもネガティブな面があり人を傷つけるということを、描きたかったとのお話でした。「東京島」では、突き抜けてイヤな主人公を書くことによって見えてくるものがあるはずとの思いだったと語られました。

後半は、最新刊「デンジャラス」の話になりました。谷崎潤一郎「細雪」をモチーフに、三女雪子のモデルである重子の視点からの「新・細雪」のような内容だとか。発売1週間にもかかわらず、もうすでに読んでいる学生たちからの感想も出ていました。客席には、船場言葉の監修をされた大学の先生や、各出版社の方々も来られていました。それぞれの立場からの生のお話などもあり、まさに学生、観客、作家、全員参加という一体感を持ちながらの和やかな会でした。(N,H

 

 

6月14日、第41回「よみうり読書 芦屋サロン」

今回のゲストは宮下奈都さんでした。

 

 

サロンに先立って読売新聞に掲載された掌握小説「左オーライ」は、心に沁みる物語でした。独身時代に起こした事故のトラウマがある主人公とその夫との、ほんの少しのやりとりでできているストーリーです。助手席に座っていた友人香ちゃんの「左オーライ」という言葉をうのみにしてアクセルを踏んでしまった主人公は、左から来たトラックを見落とし、事故を起こしてしまいます。大けがをした香ちゃんと主人公のつきあいは途絶え、香ちゃんの「左オーライ」がずっと心の奥に引っかかったままだった主人公。夫にそのこだわりを初めて話し、彼の想定外の返答によって、心の傷を克服し前向きになっていく主人公の気持ちが描かれています。

読後感は、さらさらとした優しい水が喉を通っていくよう。それは宮下奈都さんの人柄にもよるものなのでしょう。進行役の読売新聞記者や会場の参加者とのやりとりを見ていると、そう感じました。

記者の「主人公の夫の返答に、『えっ? 』となりました。夫婦のコミュニケーションが食い違ってませんか」という質問に「少しのずれが必要。思いがけない返答があるからこそいいんです」という宮下さん。「そのずれが腹立ちにならないですか」となおも食い下がる記者に、「これは小説なので」と笑いながら、別の返答をしてくれるからこそ話がふくらむ、想定内だと面白くないという宮下さんの答えに、物語を紡ぐ人の度量の広さを感じました。

「小説を書くときに大切にしているものは」という参加者の質問に、「一番書きたいものを書きます。計算しません」と答えているのが印象的でした。

 

“便利な言葉が処理されている小説は、自分が読みたくない。自分が読みたい小説を、他人に伝わるように書いている”という宮下さん。「まず、自分が幸せに生きるということが大切なのでは」という言葉を、読書サロンの最後にプレゼントしてくれました。(YM

 

 

 

 

5月27日()、近鉄上本町駅近くの古書店「一色文庫」さんにて開催された読書会に参加してきました。

 

 

課題本は、村上春樹さんの著書「職業としての小説家」。村上春樹さんといえば、芦屋市で中学、高校時代を過ごし、彼の小説の中にも、小槌公園、芦屋川の河口、松浜公園のテニスコートなど芦屋の風景がたくさん登場します。芦屋を拠点に活動している私達ワッタガッタにとっては、外すことのできない作家ですね。

今でこそ世界中で注目されている彼ですが、作家活動の初期には、多くの批判にさらされていたことが、本の中で何度も語られます。このことが若い参加者さんにとっては驚きだったようです。また、文章を書くことを職業とされている方と、学生時代に書いていたという方が参加されていたんですが、彼らは「書き手」の視点でこの本を読み込んでいらっしゃいました。私の読み方は、あくまで一読者としての読み方なんだなあと、心地よい衝撃を感じる瞬間もありました。一冊の本について、読者の数だけ違う読み方があるということを、当たり前ですが、改めて感じました。

「神宮球場でヤクルトスワローズの試合を見ながら、作家になろうと思った」という、春樹ファンにはとっては有名なエピソードについて、かっこいいのか、はたまた気障なヤツなのか、という意見の交歓は面白かったなあ。

 

読書会では、私以外にもう一人、かなりディープな村上ファンの方がいらしたので、嬉しくなってしまい、課題本の内容以外の村上オタク話を展開して、少し脱線気味な場面もありました。お店の方には、「脱線ではなく、途中下車でしたよ。」と優しい言葉をいただき、ただただ感謝です。また機会があれば、そして私の手に負えそうな課題本の回には参加してみたいと思いました。(N.H)

 

 

221日(火)「本屋、はじめました」刊行記念トークイベント~神戸で「本屋」の話をしよう~に参加してきました。

 

この本の著者は、大手書店で長年書店員、店長をされ、一年前に東京・荻窪で『Title』という書店を開業された辻山良雄さん。高校卒業まで過ごされた神戸市須磨区時代のお話から、書店勤務時代のこと、退職して開業するまでのあれこれが、神戸の出版社苦楽堂さんより出版されました。その本の刊行記念トークイベントが、凱旋帰国ならぬ、凱旋帰神で行われました。

私がなぜこの「本屋、はじめました」を手に取ったのかといえば、以前、トークイベントでの辻山さんの印象がとても良かった、そのことに尽きるように思います。彼自身に興味が湧いたのです。

まず、「神戸ってどんな街?」という話から始まりました。穏やかな人が多い。がむしゃらにならない。グイグイいかない。そんなお話のあとで、「辻山さん自身がそんな方ですよね。」と、トークのお相手であるフリーライターの石橋毅史さんが言われた一言に、「あーそうだ。だから私は彼に好印象を持ったんだ。」と合点がいきました。

街の本屋さんがどんどん廃業していく中(芦屋でも一昨年、一軒なくなりました)あえて個人経営の書店を起業するということ、それがどんなことなのか、私に本当の意味を理解することはできないかもしれない。でも、たぶんこういうことなんだろうなあと感じることはあって、それは、訪れたことはないけれど、彼のお店の魅力はきっと彼の人柄によるものも大いにあるのではないかということ。「本屋さんは本を売るところ」だけではないのだということ。

 

トークの終盤、「コロコロコミックが売れたとき、無性にうれしい。」と語ったときの彼の笑顔がとても印象的で素敵でした。地元の本屋さんが元気でいられることを願い、私は今後も、「本を購入するときは地元芦屋の書店で」をモットーにしたいと思います。(2017.2.23)(N.H

12月29日、阪急夙川駅すぐ、おもちゃひろば~Toys'Campus~さんにて、「絵本市」というイベントが開かれました。

昨年まで、大阪、阿倍野の「居留守文庫」さんで開かれていた絵本紹介イベントが、今年初めてこちらで開催され、メンバー2名が参加してきました。

今年オープンしたばかりのこちら、Toys'Campusさんは、ヨーロッパを中心とした世界各国のおもちゃが壁一面、床一面にたくさん揃えてあり、そんな上質な空間での、贅沢な絵本イベントでした。

参加者の皆さんのセレクト本、写真でじっくりご覧ください。

 

 

11月20日、第52回谷崎潤一郎賞受賞記念講演会が、芦屋ルナホールで行われ、ワッタガッタメンバーから2名が足を運びました。

作家になる前、企業で営業のお仕事をされていたという絲山秋子さん。キチッと文章で話される方だなあという印象。「原稿の締め切り?もちろん守ります!仕事ですから」ときっぱり。
それに対して、ざっくばらんなおしゃべりの長嶋有さん。スケッチブックとマジックペンで、受賞作品の舞台となっているアパートの見取り図を描きながらの爆笑トークで、会場は笑いの渦でした。
正反対のお二人、講演の後の対談コーナーは、どんなことになるのかなあ~と思っていましたが、最後の質疑応答の時間が足りなくなる程、盛り上がった対談でした。
作家という職業についての勝手な思い込み、寡黙で口べたなイメージを、いい意味で打ち破ってくれたお二人でした。(N.H)

受賞作品は、
「薄情」絲山秋子  新潮社
「三の隣は五号室」長嶋有  中央公論新社


11月4日、芦屋市ルナホールで行われた「よみうり読書芦屋サロン」に行ってきました。
今回のゲストは原田マハさん。小説家の他にも、キュレーター、カルチャーライターとしての肩書を持つ彼女の作品は、言葉の滋味にあふれているばかりでなく、アートの要素も満載です。読売新聞に掲載された、女同士の友情を描いた「笑う家」という掌握小説について語る原田マハさんのお話は軽妙で、ぐいぐい引き込まれました。特に心に残ったのは「女同士の友情にはオブリゲーション(義務)が必要ない」という言葉でした。メールや電話を必ずしなくてはいけないということはなく、自然体で付き合うことができるというのです。男女の関係ではこうはいかないと言われていたのが印象的でした。(Y.M)

→「書評」で、原田マハさん著「ロマンシェ」をご紹介しています。

 

「よみうり読書サロン」では、講演終了後、出口でこのような号外紙が配られます。

なかなか、粋な演出です♡